5/3ドリームコンサート イベントレポート

お茶の水のゴールデンウィークを彩るイベントとしてすっかり定着した

「SHIMOKURA ドリーム・コンサート」。

超一流奏者たちのプレイを手頃な料金でたっぷり聴けるとあって、特に管楽器を演奏される学生さん中心に、毎年大変な盛り上がりを見せています。

今年も5月3・4・5の3日間、明治大学リバティ・ホール(3日)とアカデミーホール(4&5日)の2箇所で開催

連日絶好の天気にも恵まれ、楽しく、気合の入った充実の演奏が
次々に繰り広げられました。


ザ・ジョイフル・ブラス

ザ・ジョイフル・ブラス

初日の一番手は、すでにこの「ドリーム・コンサート」常連でもある
「ザ・ジョイフルブラス」
のみなさん。

2015年に若手二人(トランペットの二井田ひとみさん、トロンボーンの高井天音さん)が加わって再スタートを切った、日本初のジャズ・ブラスバンドです。

まずはリーダーでトロンボーン、苅込博之さんの挨拶に続いて、
ビートルズの名曲《ミシェル》のブラスバンド版をしっとりと披露。
トランペットとトロンボーンのテクニカルなソロには早くも曲間に拍手が!

続く2曲めは往年の名トランペッター、ハリー・ジェイムスの大ヒット曲《チリビンビン》


トランペットの新メンバー、二井田ひとみさんをフィーチュアして大好評、「ぜひもう一度聴きたい!」というリクエストが多数あったとこのこと。
華麗さ、繊細さで売ったハリー・ジェイムスその人を彷彿とさせる二井田さんのソロは若いのに貫禄充分、見事な演奏でした。

そして3曲目はなんと、モーツァルトのピアノ曲《トルコ行進曲》テューバ・家中勉さんのソロで!!

曲の前に「声を出しながら吹く」という曲芸で軽く受けてから、ジャズ風《トルコ行進曲》のスタート!軽やかな行進曲と巨体のテューバという意外な組み合わせが妙にハマり、途中から観客の手拍子も促して会場は早くも大盛り上がりです。

4曲めはオリジナルがディキシーランド・ジャズの《サウス・ランパート・ストリートパレード》
吹奏楽でも演奏されることの多い人気曲ですが、ここは次々に受け渡された、冴えたアドリブ・ソロが聴きもの。

曲終わりのMCではアレンジした楽譜もマイナスワンのCDも売ってるよ! という宣伝もしっかり挟んで、 5曲めはオリジナル曲、
《オータム・ブリーズ》


ブラジルにちなんで前半はボサノヴァ、後半はサンバという構成になっているというこの曲、
主役はイケメン・トランペッターの牧原正洋さん
ダンディーなソロが特に女性ファンのハートを撃ち抜いていたようです

そしてあっという間に最後の曲。ホレス・シルヴァーのハッピーな名曲《ザ・プリーチャー》をいかにも軽やかに、
時には楽器を回しながら賑々しく(中間のドラム・ソロが圧巻でした!)盛り上げると、鳴り止まない拍手に応えてのアンコール。

「狭いながらも楽しい我が家~」の歌詞で知られる《私の青空》が始まった……と思ったら、
なんとリーダー苅込さんが歌い出した!これがまた美声!

さらには苅込さん&高井さんで驚きの二人羽織 トロンボーンという隠し芸まで繰り出す大サービスでした。


ザ・ジョイフル・ブラス 演奏ハイライトMOVIE


1994年に結成された金管楽器とドラムスによるジャズユニット。これまでに1,000回以上のステージを展開。ライブやコンサートの他、NHKの子供番組出演や日本テレビ系テレビドラマのレコーディング等も行う。また練習用CD付きオリジナル楽譜10曲をフォスターミュージックより出版。

《メンバー》二井田ひとみ(TP)、牧原正洋(TP)、苅込博之(TB)、高井天音(TB)、家中勉(TUB)、荒張正之(DS)

プロフィール

苅込 博之 HIROYUKI KARIKOMI 〔Leader/Trombone〕

武蔵野音楽大学別科修了。森寿男&ブルーコーツ、岡本章生&ゲイスターズ等のビッグバンドに参加。アメリカ、フランス、カナダ等でも演奏。またSMAPのテレビドラマや日テレ「笑ってコラえて!」にも出演。現在、ジョイフルブラスのリーダーの他、中川喜弘&ディキシーディックスでも演奏。

二井田ひとみ HITOMI NIIDA〔Trumpet〕

武蔵野音楽大学卒業。エリック宮城スペシャルビッグバンドに於てテレビ番組「題名のない音楽会」に出演。また「ゆず」の全国ツアーにホーンセクションとして参加。現在、スイング、ディキシー、ビッグバンドのライブの他にミュージカル、レコーディングなど多方面で活躍中。

牧原 正洋 MASAHIRO MAKIHARA 〔Trumpet〕

岩手県宮古市生まれ。武蔵野音楽大学卒業。これまでにオルケスタ・デル・ソル、谷口英二クインテット、角田建一ビッグバンド、宮間利之&ニューハード、須永辰緒experience等のメンバーとして活躍。NHK-FMのセッション505等にも出演。また和田アキ子、近藤真彦、EXILE、SMAP等のツアーサポートも行う他、紅白歌合戦等々多数のテレビ番組に出演。著書としてはリットーミュージックより「はじめてのビッグバンド・トランペット編」など二冊の教則本を出版。ジャズのレッスンやアドリブの講座も展開中。

高井天音 AMANE TAKAI〔Trombone〕

1989年生東京都羽村市まれ。中学校の吹奏楽部でトロンボーンを始める。国立音楽大学卒業。山下洋輔賞を受賞する。第42回山野ビッグバンドジャズコンテストにて優秀ソリスト賞を受賞。これまで共演したアーティストは渡辺貞夫、小曽根真、イエロージャケッツ、本田雅人、茅原実里、40mP虹色オーケストラ、ToshI(X JPAN)等。また歌謡曲やゲーム音楽等のレコーディングにも参加している。
ザ・ジョイフルブラスには2015年より参加。

家中 勉 TSUTOMU IENAKA 〔Tuba〕

1965年東京都葛飾区生まれ。日本大学藝術学部音楽学科卒業。卒業後、宮崎忠一&ディキシーキャッスルを経てフリーに。ジャズ、クラシック、ポルカ、ポピュラー等、多彩なジャンルで活動する。また、自ら"ブラスベース"と名乗り、チューバの無限の可能性を日夜追求し続けている。これまでに薗田憲一&ディキシーキングス、有馬靖彦&ディキシージャイブ等でも演奏。現在、中川喜弘&ディキシーディックス、アルプス音楽団、ブラスクインテット「THE GUTS!」のメンバーとして活躍する他、吹奏楽の指導も行っている。

荒張 正之 MASAYUKI ARAHARI 〔Drums〕

1964年千葉県旭市生まれ。東京コンセルヴァトワール尚美ジャズ科卒業。在学中よりジャズ、ラテン音楽のライブやクラブでの演奏活動を始める。東京ディズニーランドのイベント「ブレイジング・リズム!」に出演する他、和田雄二郎トリオ等のグループでも演奏。また著書としてはソフトバンク株式会社発行「PC Music」にドラムプログラミングに関する連載を担当。株式会社スパイクより単行本「DTM打ち込みドラムマスター」を出版。現在、ラテンエストレージャ等のバンドで活躍する他、自己のトリオでも定期的にライブ活動を行う。


大筒小筒

続いては2014年の初出演以来、1年置いて2回めの登場となった
「大筒小筒」のお二人、井出慎二さん(各種サクソフォン他)と岡部量平さん(各種パーカッション)

「あなたのハートを筒抜けにします!」という楽しげなキャッチフレーズが、すでに何か異色なものを期待させてくれます。

「決してベーシストやピアニストが脱走したわけではありません! 二人だけです!ついでに打ち合わせも台本もありません!」と清々しく宣言して、《Park Drive Sunset(パークドライブサンセット)》から開始(以下、全て井出さん作曲のオリジナル)。

井出さんが大学を卒業してボストンの名門・バークリー音楽院に留学したとき、住んでいたアパートの目の前の公園に広がる景色を思い浮かべながら作った、というこの作品はどこか東洋風でもあり、次の展開が読めない自由さと不思議な心地よさが同居。

「大筒小筒」を初めて聴く人が大半と思える客席からは、息をのむ様子がリアルに伝わってきます。

実は井出さん、ボストンに留学する前は明治大学に通って卒業した、当地に最もゆかりの深いミュージシャンです。

曲間のMCでは「現在のリバティーホールに建て替えられる前は『記念館』という講堂で、まさにこの場所にジャズ研究会があって練習をしていたから、なんだか里帰りした気分」と感慨深げ。

2曲めの前に岡部さんがドラムセットに座り、なぜかクイーンの《We will rock you》が始まったかと思いきや、これはジョーク。

《カンパネルラ》という名の次の曲、ステージでは説明がなかったのですが、井出さんが「大学生の時に、昔大好きだった『銀河鉄道の夜』を読み返したところ、夢の中でカンパネルラが出てきて、その時に流れていたメロディーを起きてから書き起こした」というエピソードがあります。


ソプラノ・サックスが情熱的に唸るこの曲を吹き終えて井出さんは一声「いいなこの楽器!」。

どういうことかというと、実はこの日、井出さんが使った楽器はほとんどがステージ上に用意された
下倉楽器のオリジナル・ブランド「MARCATO」から選んだものなのです。

「今日持ってきた楽器はこれだけ」と、井出さんが小学3年生の時から(!)使っているというソプラノ・リコーダーと、三板(さんばん)という
「沖縄のカスタネットのような楽器」での《あの日の忘れ物》が3曲め。

2011年3月11日の地震で自室の色々なものが散乱し、しまってあったそのリコーダーを見つけてから書いた曲、とのことです。

続いて岡部さんの操る様々なパーカッション類を紹介、愉快なデモを経て、
カーブドソプラノサックスとウォッシュボードでの《裸の王様》が最後の曲。「『裸の王様』のエピソードを思い浮かべながら聴いて下さい」
という曲フリから、途中でライブの告知も入れ込み、
さらにはコミカルな身振りを交えて、ついには客席に降りて演奏しながら一周!

ステージに戻ってからもその後もチューチュートレインありコールアンドレスポンスありのもはや何でもあり。

客席からは手拍子と笑い声がわき起こり、見事ハートは筒抜けになったようです。


大筒小筒 演奏ハイライトMOVIE


大筒小筒

プロフィール

井出慎二(Sax&その他)・岡部量平(per) の二人がサックスとパーカッションのみ (筒楽器)の大小様々、 手持ちの限りの楽器を駆使して お届けする破天荒ユニット♪ ジャンルの枠を超えた唯一無二のオリジナルサウンドに挑戦すべく、新境地を切り開く。


THE OMATSURIES

しばしの休憩の後は「THE OMATSURIES(ザ・オマツリーズ)」の出番。
「ロックブラスバンド」を自称するここはジャンルレス、とにかく「みんなが楽しく踊れる」をモットーにした超攻撃的新鋭団体です。

バンド名に偽りなく、1曲めの《風になりたい》からエンジン全開で客席を圧倒!

MCは中心メンバーであるトランペットの古屋ひろこさん。


「今日は盛り上げるためにいろいろ考えてきた」と、いきなり手拍子教室を開催します。
高校生、60歳以上、全員と手拍子のタイミングを予習してから、バンドが入ってやけに豪快な《スーダラ節》。

原曲を知らないであろう中高生も、とてつもないパワーで引きずり込んでいきます。

再びMCで一息入れ、「楽器やってるひとー?」と古屋さんが挙手を求めると、客席の大半の手が!内訳は中学生4、高校生4、大人2ぐらいの割合のようでした。 続いてはオリジナル曲で《シャンパンファイト》、これはアッパーなテンポのパーティーチューン。

このあたりから古屋さんと枡家さんは本格的に踊り出します。次の曲はCMソングである《ウイスキーが、お好きでしょ》。
ここはトロンボーンの枡家さんを大フィーチュア。ところで《スーダラ節》といい、お酒にまつわる曲が多めなのは気のせいでしょうか。

それにしても枡家さんのソロ、ノリノリです。

楽しい時間は過ぎるのが早いといいますが、「次が最後の曲です!」と古屋さんが告げると客席からは「えー!」の声が。

キーボードのソロから、まずはしっとりと、次第にサウンドの厚みを増して、まずは大団円となりました。


そしてアンコール。
今日の出演者から「ザ・ジョイフルブラス」の苅込さんと牧原さん、大筒小筒の二人を呼び込み、
さらに客席からトランペットとキーボードの子供二人、大人のサックスの方もステージに上げて、
まさにお祭り騒ぎの《上を向いて歩こう》。

飛び入り参加も含め、全員分のソロも大成功!

最後の最後には、今日がベースの神林亮太さんの誕生日ということが暴露?され、
客席も一緒に《ハッピーバースデー》

幸せムード一杯で幕を閉じました。

THE OMATSURIES 演奏ハイライトMOVIE


THE OMATSURIES

2014年2月、トランペット古屋ひろことトロンボーン枡家小雪を中心に結成されたロックブラスバンド。
オリジナルや歌謡曲、聞き馴染みのある音楽を「みんなが楽しく踊れる」をコンセプトにアレンジ、都内のライブハウス、お祭りを中心にライブ活動を行っている。
2015年4月に1st Album 『カンパイ!』をリリース。精力的に活動している。


古屋 ひろこ(Trp)


枡家 小雪(Trb)


吉川 しんぺい(Gt)


吉村 隆行(Key)


神林 亮太(Bass)


杉本 哲也(Drum&Perc)


小澤 篤士(Trp)


新井 一徳(TenorSax)


福島 哲平(AltoSax)



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